硝子の座席

某若手俳優を推すただのおたく

【TRICKSTER-the stage-】

観てきました。

全9公演中、7公演。自分でもよくこんなに通ったなと思います。理由は色々とありますが、かねてより応援している圭さんの座長公演、そして大好きな悪役とのことで、気が付いたらこんなことになっていました。

 

以下、舞台のネタバレを含む感想となります。ご了承くださいませ。

 

 

 

今作、一言に言って面白かった。

プロジェクションマッピング等を利用した映像演出もさる事ながら、演技に味のある俳優の起用。ダンサーの他にアクションアンサンブルまで起用したことによるサーカスシーンや、戦闘シーンのリアルさ。そして劇中歌は生歌(最近は事前に録音しておいてそれを流す舞台も多い)。クオリティが高い。

 

個人的に圭さんの悪役が大好き。

粗暴な悪役じゃあなくて、相手を一歩一歩追い詰めていくような、心にずっしりとくる重さ。冷たい微笑みを浮かべながらも、その実、他人を何とも思っていないような、そんな役がとても似合う。二十面相は、まさにそんな役だった。

 

本番前に撮り溜めていたアニメを一気見した。舞台の前に原作や関連作品をチェックしておくのも、観劇に加えて趣味のひとつだ。

演じるのはGACKT。幼い頃からTVやらで歌を耳にしていた彼が見せる二十面相。執着心の塊みたいなキャラクターだった。明智小五郎へ執着し、それが彼の魅力であり、生きる意味でもあるようだった。

 

複雑怪奇な二十面相の思考を、圭さん本来の演技へ落とし込む。GACKTが演じていたあの二十面相を上手く圭さんの中に取り込んでいるように見えた。

美しくて妖艶な空気、オーラ。私は圭さんは役を演じている時、周りの空気が変わる役者だと思っていて、しかも切り替えるのも上手い。きっとオーラのある人ってこういう人のことを言うんだ、とついつい思ってしまう。

動き一つ一つの所作が美しく、歩くだけで目線がそちらに行ってしまう。仕込み杖に、剣を抜けばフェンシングのように捌いて、相手を翻弄する。動くたびに翻るチャイナ服風の衣装、チラリと見え隠れするガンホルダーが魅惑的だった。

 

他の俳優についても少々。

鯨井さんは、なんとマグダラなマリアぶりだったのですが、やっぱりこの人の安定した歌声が好きです。CDに収録されている音源よりも、生で聴く方が断然良い。声だけでなく、もちろん雰囲気も明智にぴったり。

少年探偵団の皆もそれぞれイメージ通りだった。

燈くんの細い体にフィットしたジャージ姿は案外似合っていたし、運動神経も抜群で、花崎のままの動きをしてくれていた。ソロで歌う「名探偵になりたい」という曲が好きで、劇中歌の中ではいちばんのお気に入りだったりする。

鳥越くんは普段、関西弁で話してる元気な男の子と言うイメージ。しかし、今回の小林という役ではおしゃべりのイメージとは裏腹に、無口でクールな役どころだった。その反動か、カーテンコールの時は元気にしゃべっていて、なんだか微笑ましかったのを覚えています。

遼太郎くんはあんステの晃牙くんのイメージしかなかったから、井上をどう演じるか想像がつかなかったのだけれど、思ったよりクールな役が似合っていた。

 

輝山くんの演技にも注目したい。明るく元気なオリジナルキャラクターを演じている一方で、猟奇的殺人鬼ヘルクラウンと言う難解な役にも挑戦している。大切だった兄をイジメで亡くし、それ以来血に目覚めたキャラだ。コロコロと表情、仕草の変わる演技に、今後の彼を期待せずにはいられない。

 

この他、メインキャストまたそれ以外のダンサーやアンサンブル、彼らの存在も忘れてはいけない。

サーカスのシーンでの彼らは、飛んだり跳ねたり舞台を見ているはずのこちらが、まるで本物のサーカスを観に来ているように錯覚した。

 

 

明智と二十面相の関係が、アニメよりも濃厚に取り上げられていて、私個人としてとても見応えがある舞台だったと思う。悪とは何か、善とは。という問いが随所に散りばめられていた。

座長の圭さんが仰っていた通り、アニメからの方も、観ていない方も楽しめる舞台だったのではないだろうか。

また、舞台を観て興味があったらぜひアニメを観ることを勧めたいです。最終回の明智と二十面相の不思議な空気感が、お気に入りだったりします。

 

 

しかし、今回の公演には反省点が多い。

いちばん大きな問題はチケットの売れなさだと思う。私は直接目にしていないが、昼公演の席は後ろ半分ガラガラだったそうだ。千秋楽こそほぼ満席だったが、前楽の昼公演もちょこちょこと空席が目立ったし、平日夜公演なんて目立つどころの騒ぎじゃない。

昨今、こうした所謂2.5次元系の舞台の乱立で、それを追うファンの分散化が激しいが、今回はそれだけの問題ではないと思う。コアなファンであれば、時間とお金さえあれば実際どこにでも行く。それ以外のライトなファン層をいかに引き込むかということが焦点になる。

それを考えると、ブルーシアターという駅から微妙に遠く、またそもそも六本木というこの界隈の舞台を好むファンがなかなか足を運びにくい立地も、多少なりとも関係していると思う。先に述べた乱立により、こうした劇場の確保も大変だと思うが、それに加えて作品の知名度の問題もあると思う。TVCMなどでも見かけたが、もう少し宣伝やチケットの販売方法を考えた方がよかったのではないか。

終盤になり、チケットと一緒にキャストランダムで俳優のサイン入りポストカードが付くものなども販売されたが、もう少し前に導入していれば客足も伸びたのではないか。などと、考えれば考えるほどキリがない。

 

きっと、舞台化もアニメとほぼ同時進行でスタートしたのだと思う。だから、人気が爆発的に出なくても舞台化したのだと、そう感じた。それが今、この業界の流れでもある。

 

自分の推しが空席を見つけて、切なそうにするのを観るのは、こちらとしてもあまりいい気持ちにならない。今回は座長としてより一層、様々な感情を抱いたであろう。

せめて、ほんの少しでもその気持ちを和らげたくて、この舞台に通ってしまった。という本音もある。

良い座組、良い演出に恵まれても、結局は観てくれるお客さんがいなくてはしょうがない。

 

それも相まって千秋楽のスタンディングオベーションはこちらとしても、感極まるものだった。席もほぼ完売し、最後の最後でやっと彼らの熱量にお客さんが追いつけた気がした。

 

本公演で、最高の悪を見せてくれてありがとう。あの張り付いたような冷たい笑みが素敵でした。

そして、最後の挨拶で「それでわけで」と謎の言葉を発してしまい、今度は本当の笑顔でゆる〜く幕を閉じました。やっぱり彼はこうじゃなくちゃね!と思ってしまった自分がいて、笑顔の帰り道でした。

 

ありがとう、TRICKSTER