硝子の座席

某若手俳優を推すただのおたく 舞台と読書とゲームが好きなので、その辺りの話多め

【舞台 ピカレスク◆セブン】

 

無事、岡崎での大千秋楽を迎えたため、備忘録の意味も込めて書き記すことにします。

 

劇団、少年社中さん20周年記念企画第1弾、東映とのコラボ作品。

所謂戦隊モノや仮面ライダーなどで活躍した俳優らを客演陣として起用し、悪役として再構成した本作。

 

テーマはズバリ、

「悪とは」。

 

将軍を務めているものの、どこか自信のないトクガワイエミツ。

将軍職を肩代わりしてもらおうと、夢のお告げの通り現れた笛吹きのピピにお願いし、祖父であるトクガワイエヤスを蘇らせる。

しかし、彼は悪人として共に召喚された部下たちを先導し、日ノ本を征服してしまう。

そんなイエヤスを打ち砕くため、さらにマクベスら7人の悪人を蘇らせ日ノ本を取り戻すために奔走するが…。策略、裏切りが渦巻き、次第にイエミツを飲み込んでいく。

 

社中さんの作品を観たことはなかったのだが、正直、思っていたより楽しく観れた。

というのも、悪が、悪人がテーマであるということもあって、もっと重い作風になるかと思っていたので、コミカルなタッチが随所にバランスがとてもよく、シリアスなシーンも重たくなりすぎずに観ることが出来た。

衣装も、撮影時と公演は違うものを着用するということを後から知り、単純にすごいと感嘆せざるを得ない。衣装にお金を掛けてくれる劇団は素敵だなあと思うし、撮影時は兎に角黒く色彩は光で表していたけれど、公演では差し色もふんだんに使ったいくらかライトなものへと変更されている。

 

また20周年記念作品ということもあり、以前の作品で活躍したキャラクターたちも登場する。

リチャード3世やピーターパン、フック船長など、社中さんの作品のファンであればきっと興奮せざるを得ない。そう思える公演となっている。

 

明るく元気でのんびりとしており、何でも乳母の春日局に意見を求めている青年トクガワイエミツ。

日ノ本を治める自信はない。悪いことなどしたくはない。まさに白を基調とした服の似合う好青年である彼は、悪人らとの関わりを経て成長する。ピカレスク◆セブン自体、大きく枠を設ければイエミツの成長物語である。

 

彼の成長を促進したのは、この日ノ本で有名な武将らに混じって異彩を放つマクベス

そんな彼の内面を上手く見せるために現れる3人の魔女。この魔女がいることによって、よりマクベスが何を考え、何に苦悩し生きてきたかが浮き彫りになっていく。そして、再度魔女というもう1人(3人)の自分に翻弄され2度目の生をイエミツによって絶たれる。

 

2人の正義と悪がぶつかり、絡み合い生まれるものこそ、この作品で表現したかったことなのだろうと私は推察している。

 

 

 

圭さんは短いスパンで再び織田ノブナガを演じた。

相変わらず濃いメイクがとても似合っている。サラサラとしたロングヘアをポニーテールにしており、剣をふるった時などひらりと舞って綺麗だ。

蘇った中には豊臣ヒデヨシも登場し、サルとしてノブナガの下につくことになる。

これは友人に指摘されて気が付いたことではあるが、サルはもしかして以前戦隊シリーズゴーカイジャー、バスコ・タ・ジョロキアを演じた時に側にいた宇宙猿のサリーをイメージしているのではないかとのこと。

言われてみれば上手い配役だなあとじわじわ来た。せっかくの東映のコラボなのだからね。

 

劇中ではダンスをして踊るシーンもあり、とても不安だったのだが、以前より格段に上手くなっていたことに驚いた。(しかし指の決めポーズが若干違ったりなどそういったことはあった)

ある日は刀が鞘から抜けてしまい、それを慌てて指で触ってしまった公演もあり、笑いを誘った(初見の方はおそらくあれも演出かな?と思われるかもしれないが、ただのドジっ子です)。

 

他には黒タイツの男が気になってしょうがなかった。この作品最大のスパイスだったのではないだろうか。

黒タイツと言っているのに、白タイツで出て来た時の衝撃と言ったらない。

 

 

 

数回観て強く感じたのは、これは鈴木勝吾と宮崎秋人のために作られた作品であるということである。

もちろん2人がメインであるし、白と黒で対立していたものが、様々な経験を経て黒へ染まる。そして、黒と黒がぶつかった時どちらが勝利するのか。そういったことを表現しているのは分かる。

しかし、それ以上にメインの2人を、もうこれ以上にないほど輝かせようとしているのだ。また、輝かせることこそ、この作品において重要な要素であり、見応えにも繋がるのだが。

 

私は社中さんからでも、鈴木さん宮崎さん両名の個人的なファンではないからこそ思うのだが、羨ましいと思う。

ここまで熱い芝居をさせて貰っている彼ら、それを観せて貰っている私たち。製作陣から信頼されこうして1つの物語が出来上がっている。今回が2人の物語ということもあったが、それはそれ。

色々考えることがあった。

もやもやすることもあったが、今回この作品でテーマやメッセージとは別に考えさせられることがあったのは、とてもよいことだと思う。

まさに本作を観て、私自身の頭の中で化学反応が起こったのであろう。

 

 

綺麗は穢い。

穢いは綺麗。

否。

綺麗は綺麗。

穢いは穢い。

 

この台詞が、終演後もグルグルしていた。

正義と悪は二面性のあるもの。どちらかが消えてどちらかが残ることはあり得ない。

また、悪だと思うことも角度を変えて見てみれば正義であるし、逆も然り。

きっとそういうことであろう。

 

イエミツからの最後の力強いエールを思い出し、毎日を一歩ずつでも確かに生きて行かねばなあと心に強く響いた。