硝子の座席

某若手俳優を推すただのおたく 舞台と読書とゲームが好きなので、その辺りの話多め

【舞台 巌窟王 Le theatre】

 

ご無沙汰しております。12/23マチネソワレともに、舞台「巌窟王」を観て参りました。

個人的に色々とありまして、精神衛生上の理由からも、今までずっと推していた俳優を変え、小松準弥さんを応援しようと踏み出したはずの私でしたが……。

ご縁というものは続くもので、今回は元推しと新推しが共演しております。複雑ではありますが、お芝居は好きなのでなるべく気にしないことにします。

 

さて、巌窟王ですが、常日頃から原作のある作品は予習をしてから観劇に臨むのですが、この作品では趣向を変えて、今自分の中にある知識だけで観ることにしました。

巌窟王といえばフランスのデュマ作、無実の罪で投獄されてしまった男の復讐の物語という程度の知識しかない中で観ましたが……。

 

一言、最高でした。

元々悪役が大好物である私個人としては題材もなかなかに魅力的でしたし、シリアスで感情のグチャグチャとした悪意に満ちた人間関係。ドロドロとしているその世界観に、すぐに魅了されました。

何より小松さんが悪役を演じられていて、息も絶え絶えになりました(私が)

さわやかでニコニコとした笑顔が印象的な小松さんのイメージとは打って変わって、その表情はひんやりと冷酷で笑顔は一瞬たりとも見せません。

笑うといいましても、にやりと片方の口の端を上げるだけで、ニコリともしません。

そんなキャラクター、アンドレア・カバルカンティ侯爵ですが、髪の毛は金髪ロングでくるくると巻かれていて、お召し物は赤い上着に白いシャツやズボン。そう、まるで白馬の王子様みたいではありませんか。個人的にそのビジュアルがドストライクで、もうそれだけで小松さんがカバルカンティを演じてくださっていることを神に感謝してしまうのに、話が進むにつれて嫌な予感しかしません。これはどう考えても……。その嫌な予感は物語的にも、そして個人的にもです。

カバルカンティは、モンテ・クリスト伯爵の策略で主人公のアルベールの婚約者であったユージェニーと婚約します。しかし彼ら、実は異母兄妹なんですよ。そう異母兄妹なんですよ。(大切なことなので2回書きます)

そうです、私の嫌な予感は的中してしまったのです。元推しが新推しと実の親子役という事実です。幸い今日は精神的に問題のない日でしたので普通に楽しめましたが、これがしんどい日だったらと思うとゾッとします。地獄だったのでは?

 

それはさておき、カバルカンティは実の母親であるダングラール夫人にも急接近します。

酒に溺れ弱り果てる夫人に、自らの上着を夫人の肩に掛けてあげ、さらにはごく自然な仕草でほっぺにキスです。観ているこちらは大興奮。心の中でうおおお!!!ひえええええ!!!とか奇声をたくさん上げていたのは間違い無く私です。かっこいい。

 

そして、ユージェニーとの結婚式の日。白いお召し物に身を包んだカバルカンティは、本当に白馬の王子様のよう……!とついうっとりしてしまいますが、式の直前、ようやく復讐の時かと考えを馳せている彼の虚無の表情にぐっときます。

結局あと一歩のところで結婚は為されず、しまいにカバルカンティは詐欺、経歴詐称、強姦、窃盗などの罪で逮捕されます。

途端、今までの貴公子の仮面は剥がれて、素の粗暴な性格が姿を現します。今までの態度とは一変した悪どい彼もかっこいいです。

そうしてカバルカンティは裁判にかけられます。そこでは彼の実の父親であるヴィルフォール主席判事が彼を裁こうとします。

最後の一言を問われたカバルカンティは場を混乱に陥れ、裁判を唖然としながらも見守っているであろう人々に実の父と母を紹介し、その上でヴィルフォール主席判事に毒針のようなものを刺します。

そして満を持してモンテ・クリスト伯爵が復讐に現れるのです。

あああああ!その時のカバルカンティの虚ろな瞳!!表情!!!ちょっと後ろで観にくいかもしれませんがあの表情は一見の価値ありだと思うんですよ!復讐を果たしたからといって心が満たされるわけでもなく、彼の虚無はそのままあり続けるんです。

無様な格好で這いつくばる実の親を哀れだとでも言いたそうなその瞳も、クセになります。そのあとの狂ったような笑い声も最高でした。もっとこういういかれた役に挑戦してくださいいいい。

 

カーテンコールも、1度目は固く冷酷な表情を一切崩しませんでしたが、2度目ではにこにことさわやかな笑顔で、いつもの小松さんだとほっと安心しました。そういうギャップがたまらないですよね。ギャップ萌えは、いにしえから患っています。

 

公私混同(?)といいますか、物語と私が見ている現実がごちゃ混ぜになって、あまりレポや感想になっていませんでしたね。すみません。

もう少し語彙力があればな〜と常日頃思っておりますが、このレベル以上になかなかなりませんね。だってかっこいいんですもの。推しに対して言葉を上手く紡げないのはオタクの性だと自負しておりますので、しょうがないですよね。

楽しかったり好みだったり、精神的に乗り越えたはずの壁がやってきたりと複雑な気持ちになってしまう作品でしたが、個人的に年内最後に観るに相応しい舞台だったのではないでしょうか?(本当に色々な意味で)

それでは!