硝子の座席

某若手俳優を推すただのおたく 舞台と読書とゲームが好きなので、その辺りの話多め

【舞台 COCOON 月の翳り星ひとつ】

 

COCOON 月の翳り星ひとつ、両公演とも観劇致しました。

 

TRUMPシリーズはグランギニョル、そして公演直前のはじめての繭期にてSPECTER、マリーゴールドを履修したひよっこですので、お手柔らかに…。

 

以下、個人の感想です。また、ネタバレしか含まれておりませんので、あらかじめご了承ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず何から言ったらいいでしょうか。

感情が氾濫して正常な思考を保てなかったと言った方がいいのでしょうか?

今回、兼ねてからの推しである細貝圭さんがTRUMPシリーズにご出演されるとのことで、嬉々としながらチケットを取りました。

 

2つの舞台を同時期に上演するという珍しいスタイルもさながら、演者の配役を本番の幕が上がるまで一切発表しないというなかなか体験できない仕組みでした。

月の翳りをメインに予定を組んだため、星ひとつは1回しか観劇できなかったことが今となってはただ唯一の後悔かと。

 

 

 

【月の翳り編】

Twitterにて本作を作り上げてくださっている末満さんが「ずっと曇り空みたいな作品」とおっしゃっていた通り、ずっと鬱々と続く曇り空が立ち込めたような舞台でした。

アドリブのシーンや、ギャグのシーンもグッと抑えられていて、繭期の彼らの生き様をまざまざと見せつけられました。

同シリーズの他作品も重い内容が多いですが、突然ズンとくる重さというよりは終始重りをつけた状態で観劇していたような。そんな気がします。

 

月の物語の主旋律、表はアンジェリコ、裏はドナテルロがメインでしょうか。

アンジェリコラファエロへの執着。

ドナテルロのグスタフへの執着。

この2つはとても似ていて、ぴったりと重なり合うものだと思います。

互いに相手の人物ではなく、自らが作り上げた幻想の中の相手に対して執着していて、いざ自分の幻想の中の理想と現実の彼らが違うとわかった瞬間に拒絶してしまうのです。

 

アンジェリコラファエロ、彼らに友情はあったと思います。幼馴染という強固にも容易く切れてしまうこともどちらにでもできてしまう絆ではありましたが。

それを壊してしまったのはアンジェリコの歪んだ友愛や、ラファエロのウルへの過剰なまでの過保護さ(とは言ってもここでのウルはエミールだし、ウルを愛しているから過保護なのではなく、父親との歪な関係性がラファエロをここまで追い詰めてしまったのですが…)など様々な要因が重なって絡まり合った結果が友情の破綻に繋がってしまったのだと思うんです。

アンジェリコラファエロにウルと比べられて選ばれなかった、ラファエロの"たったひとり"に選ばれなかったことに深く傷つき絶望します。父親に愛されたいという気持ちを抱えた2人の青年は、似ているようでどこか違うんです。昔と今を比べて変わった、変わっていないと言い合いますが、人間(この場合は吸血種ですが)そんな簡単に根元の部分が変わる生き物ではないと思うですよね。泣き虫アンジェリコは多少の時を経ただけでは、泣き虫アンジェリコのままなんです。

話が進んでいくにつれて、ラファエロとの関係にヒビが入り精神的に不安定になっていくアンジェリコ。その様子は血の繋がっていないはずの父親、ゲルハルトを想起させます。

 

ドナテルロとグスタフとミケランジェロにも、友情ってあったと私は思うんですよね。

少なくともグスタフとミケランジェロはドナテルロを信頼していたと思うし、たとえクランの子たちの繭期の症状が酷くなっていることを怪しんでいたとしても、最後の最後までドナテルロのことを信じていたと思うんです。

それは同じクランで繭期を過ごしていたということもありますし、ドナテルロが件のクランにティーチャーとして就任してから事を起こすまでにおそらく多少の時間を空けたであろうことにも起因します。その間にきっと信頼を勝ち得ていたのだなあと思うのです。だから、怪しいと思っても厳しく問い詰めたりしなかったのではないかと。

また、グスタフがドナテルロを呼び出して2人で話すシーンなど、事件への何らかの証拠を掴んでいるのではないかと、情報提供を促しています。まるで彼自身の口から罪を自白して欲しいと言っているようなものです。

あの流れからいって、ドナテルロが今回の事件の関係者であることはグスタフ、そしてミケランジェロの中ではほぼ確定だったのだと思います。それでも彼の口から聞くまでは信じたくない、ドナテルロを信じたいと思っていたのではないでしょうか。

 

ただ、ドナテルロの立場からしたらそんな友情などさらさら求めていないし、感じてすらいなくて、自らの欲望のままにかつてのグスタフの繭期、失ってしまった自らの繭期、美しい繭期をひたすらに追い求めていただけなんですよね。

彼にとって友情なんかよりも重要なことは、失ってしまった自分の大切な繭期を、心の隙間を埋めるためにかつてのグスタフのような美しい繭期をこのクランで作り出すことだけなんです。

 

ディエゴとドナテルロの関係も、お互いの目的のための手段として互いに接しているのがよくわかります。そして、ドナテルロはディエゴの中に幻想の中のグスタフを見ているんです。グスタフの繭期に憧れて追い求めるうちに狂ってしまったのか。それともCOCOONによって作られた繭期の中に閉じ込められたままなのか。ドナテルロのその後も気になります。死んだのか、それとも……。

 

物語から離れて演技の話にはなりますが、大人の吸血種が飲用すれば繭期の揺り戻しを起こす薬、COCOONをキメた細貝さんの演技が最高に好きでした。ひっさびさに性癖にグサリと刺さる役が来てしまったなあと、初日の月公演の私の心の中はお祭り騒ぎでした。とにかく耽美で美しくも狂ってた。

毎回特に楽しみだったシーンは、ディエゴと養護室で昔話をしているときと、ティーチャーたちでの殺陣です。興奮のあまり目に涙を溜めて昔話に熱を上げるドナテルロの姿は、まさに変態そのものでした。

ティーチャーたちの殺陣では、西洋剣での殺陣があまりにもかっこよくて、似合いすぎてドキドキしたものです。

 

あとドナテルロ、普段の一人称は「私」ですが、回顧録や動揺したりしたときの一人称は「僕」なんですね。そっちが本当の一人称かあ、などと考えていたら、かわいいなあとついつい顔がにやけてしまいました。

 

 

 

【星ひとつ】

後半ずっと泣いていました。

何処がと聞かれると説明するのが難しいなあと思うのですが、今まで観てきたTRUMPシリーズの様々な要素が一斉に襲いかかって来たような感覚に陥っていました。本当にたくさんの伏線たちがその仕掛けを発動させたかのようでしたね。ただただ涙が零れ落ちてしまうんです。

 

そんな中、個人的にテンションが上がったのが私を始め、このシリーズを追っている多くの人が好いているであろうと想像すること容易いダリちゃんことダリ・デリコ卿。

染谷さんを出演者一覧で拝見した時に、ダリちゃん来たのでは?!?!と興奮を露わにしてしまったあのダリちゃんです。

彼のシーンは明るく、アドリブのあるシーンもあってたくさん笑わせていただきました。ダリちゃんコールもちゃっかりやりました。やっぱりダリちゃんが好き。

 

星の物語の主旋律、表はウル、裏はダリちゃんでしょうか。

ウルの物語であると冒頭に語られていた通り、彼の顛末が語られましたね。

 

月の翳りで死者がほとんど出ず(ドナテルロは死体が見つからなかったため、不明ということにさせてください)すっかり本来のTRUMPシリーズを忘れかけていたところにこれですよ。

 

創造主であるTRUMPのご機嫌を損ねたために、あまりに呆気なく灰になってしまった彼らを前に、どうすることも、できなかったです。私なんか考えることすら放棄して、ぼんやりとしてしまい、お話の中に思考が取り残されてしまっていたんです。

 

月であんなにウルやお父様のことで悩み苦しみもがいていたラファエロや、ただ唯一の友だと信じていた幻想の中のラファエロに裏切られ、選んでもらうことのできなかったアンジェリコ。そして、死に怯え自らの運命に翻弄されながらも懸命に生きていたウルも。みんなあの日、あの時間に、消えてなくなってしまったんです。確かに形あるものはいつかは消えてなくなってしまうのかもしれません。それでも、あまりに突然消えてしまって、脳内処理が追いつかなかった……。

 

 

今思えば、ダリちゃんの子育ての失敗が絶望の火種になってしまっていたのかなあ、と思うんです。本来であればそんなダリちゃんの不器用なところを、妻であるフリーダ様が補うことでこの夫婦はバランスが取れていたと思うんです。

もうどうにもならないこととはわかっていても、もしフリーダ様が生きていてくださっていたら、ここまで事態は悪化しなかったのかもしれないと思わずにはいられないのです。

グランギニョルでフリーダ様がいちばん好きでしたので、どうしてもそう思ってしまうんですよね。

 

ソフィとウルの友情が丁寧に描かれていて、ようやくソフィがウルへ執着する理由が明確になったような気がしました。ウルはダンピールであるソフィに同族意識と、秘かな憧れを抱いていましたし、ソフィからしたら蔑まれることが当たり前だった中、ただ1人友達と言ってくれた子ですもんね。TRUMPの都合で望んでもいなかったファルスの力を手に入れてしまったソフィの絶望が、じわじわと迫ってきました。

最後には自らの運命を受け入れて死んだウルと、何知らず何も出来ずに死んだアンジェリコの異父兄弟。果たしてどちらが幸せな死だったんでしょうか?

 

劇中、何度も何度も「このクランを出たら」というようなセリフがありましたが、アンジェリコラファエロが永遠にこのクランから出ることはないのだと知ってしまうと、あまりに絶望的で。深淵の底へと我々を突き落とす一言だと思いました。

悩み絶望し悶えた彼らの人生は道半ばで途切れてしまったのですから。

 

ただ星の最後、ダリちゃんがウルへと話しかけた言葉に、グランギニョル履修済みの私は涙が止まりませんでした。寧ろ加速する涙腺。あのラストがあったからこそ、星には何処か清涼感のある見ごたえを感じたのだと思うんです。

Twitterでどなたかがおっしゃっていたのですが、今作では希望を表す照明の色が『黄色』だったのではないかと考察されていた方がいらっしゃいました。そして、あのダリちゃんとウルのラスト。なんと照明の色が黄色だったというのです。私も同じ作品を観ていたはずなのですが、あまりにも泣いてしまっていたため気が付かないという……。

 

観る順番としては月→星がやはり正しいような気がします。逆でも問題はないけど、純粋に闇と絶望が深まるから初見の人には月→星をおすすめしたいですよね。

初めて星→月をした日の月公演の私はあまりの絶望に放心状態でした……。単独で観ていた時とはまた違う見方ができて楽しいには楽しいのですが…。

 

そうこうしているうちに、すっかり繭期から抜け出せなくなってしまいまして……。きっとまだまだ続いていくシリーズだと思いますので、じっくりと次回作を楽しみに待ちたいと思います。それまでに、なんとかTRUMPをみなくては……。既にもうCOCOONのDVDが手元に欲しくて仕方がないです…。発売までが長い…!

またドナテルロの姿が何処かで見られますように。